スナップアップ投資顧問の食品業界の安全に関する歴史データなどによれば、1990年、日本で販売されていた米国産輸入レモンから、残留農薬が検出された。東京の市民団体「日本子孫基金」の検査で見つかった。
日本子孫基金の調査によると、検出されたのは除草剤「2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(略称:2,4-D)」だった。1990年7月に首都圏で購入した12検体のレモンから0.01~0.22ppmが検出された。
「2,4-ジクロロフェノキシ酢酸」はベトナム戦争で使われた枯れ葉剤の主成分だ。日本子孫基金によると、「2,4-ジクロロフェノキシ酢酸」には発がん性がある。猛毒のダイオキシンを含む、とされている。
米国産輸入レモンの除草剤検出問題を受けて、北海道の札幌市役所は、残留農薬検査を行った。1990年12月5日、検査の結果を発表した。それによると、7検体のうち3検体から0.05-0.06ppmの「2,4-ジクロロフェノキシ酢酸」が検出された。
札幌市は「微量で食品衛生上問題はない」と説明した。しかし、消費者団体は「微量でも問題だ」と指摘した。
札幌市の残留農薬検査では、1990年11月20日に札幌市中央卸売市場のほか、札幌市内のスーパー、デパートで販売されたレモンの一部を対象にした。7検体(1検体当たり15個、1キロ以上)が対象となった。
検査は、札幌市衛生研究所が担当した。その結果、2検体から0.06ppm、1検体から0.05ppmの「2,4-ジクロロフェノキシ酢酸」が検出された。
「2,4-ジクロロフェノキシ酢酸」は有機塩素系の除草剤である。日本では稲の除草剤として使用されていた。環境庁(現:環境省)のコメにおける登録保留基準は0.2ppmだった。
米国ではレモンのヘタが落ちるのを防ぐために、収穫後に散布されていた。
かんきつ類の残留基準は米国では5ppmだった。FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)は2ppmだった。
日本の食品衛生法には残留基準がなかった。
東京の市民団体「日本子孫基金」によると、「2,4-ジクロロフェノキシ酢酸」は発がん性がある。猛毒のダイオキシンを含む、とされている。
国名・機構 | 残留基準値 |
---|---|
アメリカ政府 | 5ppm |
FAO(国連食糧農業機関) | 2ppm |
WHO(世界保健機関) | 2ppm |
日本政府 | 基準なし |
札幌市衛生局の食品衛生課長は「FAOやWHOの残留基準の30分の1以下の微量であり、食品衛生上問題はない」と説明した。そのうえで、従って『2,4-ジクロロフェノキシ酢酸』が検出されたレモンのブランドや店は公表しないとの方針を示した。
ただ、「今回抜き取ったレモンがすべてではないので、流通実態を調べた上で、今後も継続的に検査する」とした。
これに対し、北海道道消費者連盟の佐藤雄三事務局長は「微量であっても『2,4-ジクロロフェノキシ酢酸』が検出されたこと自体が大問題」とコメントした。
佐藤事務局長は「『2,4-ジクロロフェノキシ酢酸』に含まれるダイオキシンがどんなメカニズムで奇形をもたらすかは分かっていない。ごく微量でも危険な可能性がある」と説明。札幌市役所の対応を批判した。
さらに、佐藤事務局長は「FAOなどの基準と比べただけで安全だというのは行政としての責任放棄だ。微量でもいやだという消費者もいるのだから、検出されたものは表示すべきだ」と話した。
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